16人が本棚に入れています
本棚に追加
名前を呼ばれたことでお医者さんは掴まえていた僕を離してくれた。
すぐさま二人の元へ駆け寄る。
二人とも苦しそうに息を吸う度に口から『ヒュー、ヒュー』と音がしていた。そして時折、小さく咳き込み少量の血を吐いた。
それでも懸命に、僕に話しかけてきた。
「…アルク、父さんと…母さんはもう…ダメだ…。」
その言葉を聴いた瞬間に止まりかけていた涙がまた溢れてきた。
「うっ…、ふぅっ…うぇ…。」
涙で視界がぼやけて見えなくなる。拭っても拭っても止まらない。
「泣くな!」
毒で苦しんでいる筈のお父さんから強い言葉が聞こえた。
ビクッと肩を震わせてお父さんの方を向いた。
最初のコメントを投稿しよう!