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最近よく、夢を見る。
夢の中でオレは、異形の化け物を退治する正義の味方のような存在で、人々からは現代のジャンヌダルクと崇められていた。
誤解が深まらない内に一応言っておくが、オレは『女』だ。
戸籍上だけの話しではなく、生物学的観点からしても女である。
なぜこんな一人称を使っているのかと言うと、それが一番似合うからだ。
主観的に見ても客観的に見ても、この一人称が一番合っている。
その証拠に、前に一人称を『私』にしたら、友人から思いっきり笑われた。
悔しいので、できるだけ女の子らしい服装をしてみるも、どうもTシャツにジーンズやジャージの方が似合ってしまうのだ。
和服やチャイナドレスは似合うと誉められたことがあったが、どちらも私服としては着られない。
さて、現実逃避のための自己再認識もそろそろ厳しくなってきたので、現実を見直そうと思う。
デジタル式の目覚まし時計を手に取り、時間を確認する。
AM 02:40
悪夢のせいで目覚めてしまったのだろう。だが不思議と寝直そうという気持ちになれない。理由は明白。深夜にしても早朝にしても、明るすぎる。
ケータイを開いて再び時間を確認する。
AM 08:00
「ははっ」
思わず笑ってしまったが笑っている場合ではない。
「遅刻だあぁぁっ!」
寝癖のひどい頭を掻きむしる。
そうしたところで何かが変わる訳では無いが、とにかく掻きむしる。
なんだか気になる夢を見たような気がするが、そんな事を気にしている余裕はなかった。
普段なら7時丁度にけたたましく鳴り響くベルの音が、今日に限って鳴らなかったのは電池が切れたためだろう。
「なんでよりにもよって平日に止まるんだよ~!」
誰に聞かせる訳でもなく、ただ単に不満は口にしないと気がすまない質なので、髪をとかしながら一人でぼやく。
チンッと、先にトースターに突っ込んでおいたパンが軽く跳び上がった。
寝癖を直し終え、パンを抜き取り、バターを薄く塗り、恐らく人生最速で4枚のパンを胃に詰め込む。
そしてセーラー服に着替え、靴を履き、自転車のカゴにカバンを叩きつけるように突っ込むと、スカートが翻るのも気にせず全力でペダルを踏みしめた。
普段は電車に乗って学校に向かうのだが、今の時間からだと、電車では間に合わない。
しかし自転車なら、全力で漕いで信号に一度も足止めされなければ、ギリギリ間に合うはずだ。
可能性は、0じゃない。
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