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学校へ向かう竜馬。
祖母の千代が言ってた通り、空は雲一つない日本晴れだった。
澄んだ秋空を仰ぐ竜馬。
東シナ海から吹いて来る潮風が、竜馬の背中を通り抜ける。
『リョウマ!』
クラスメイトの剛が駈け寄って来た。
『どげん? 調子は』
剛がバトンを受け取る真似をして竜馬の前に出た。
『絶好調!』
剛の真新しいスニーカーに目をやる竜馬。
今にも親指の辺りが破れそうになっている竜馬の靴に、剛は目を逸らした。
『新しいんは豆できるけん、いらん言うたんやけどな』
『……』
『母ちゃんがうるさかけん』
無言の竜馬に気を使う剛。
『……うん』
『オレ、ケンジんとこ寄るけん』
剛はそう言うと足早に駈けていった。
剛の軽やかに駈ける後ろ姿を、追い掛ける竜馬。
眩しく光る真新しいスニーカーが羨ましく思えた。
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