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朝の部のプログラムが終わり、昼食に移る。
生徒は各々両親が陣取っている場所へと移動する。
殆どが体育館の中だ。
秋とは言え、昼間の日差しは邪魔だったからだ。
竜馬は祖母の千代を探しに体育館の中へ入った。
途端に、運動会の香りが竜馬の鼻をくすぐった。
まだ青いミカンの甘酸っぱい香り。
梨の甘い香り。
唐揚げの香りが食欲をそそる。
『リョウマ! ここたい!』
千代が体育館の真ん中で大きく手を振った。
----端っこでよかたい----
千代の大きな声に注目を浴びているようで、竜馬は恥ずかしかった。
『唐揚げばしこたま作ったけん』
『……うん』
竜馬は周りをチラチラと見てしまう。
祖母と二人きりを、見られているような錯覚が恥ずかしさを連れてくる。
周りは両親に囲まれて、重箱が所狭しと並んでいた。
竜馬の目の前には、おにぎりと稲荷寿司が入った薄い透明のプラスチックの容器と、唐揚げとキンピラゴボウに少し焦げた玉子焼きが入ったタッパ。
その横にはミカンが二つと梨が一個置いてある。
『これも食べて気張れ!』
千代が梨を器用に剥く。
『……うん』
『母ちゃん、間に合えばよかがね……』
『母ちゃん来ると?』
『……来い、言うとるけん』
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