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順番を待つ竜馬。
遠目に母の姿を探す。
祖母の姿を見つけるも、母の姿は無かった。
三走目の哲也が四走目の智美に一位でバトンを渡す。
その時、智美の手からバトンが落ちた。
慌ててバトンを拾う智美。
あっと言う間に三番まで順位が落ちた。
泣きながら走る智美。
声援が一層大きくなる。
『ここから! ここから!』
と、五組全員が絶叫する。
智美は一人抜かれて四番目で竜馬にバトンを渡した。
『ごめんなさい!』
後ろから智美の泣きながら叫ぶ声が竜馬の耳に入る。
一位は三組、第二コーナーを周りかけていた。
----三組のシンジなら抜ける!----
竜馬のスピードに、どよめきが起こる。
速い。
スマートなフォームに全員が釘付けされていた。
運動会を盛り上げる放送部の声も止まっている。
あっという間に竜馬は二位まで追いついた。
一位を走る信治が後ろを振り返る。
慌ててスピードを上げる信治。
声援が最高潮に達する。
『ウォーッーッ!』
竜馬が一位でテープを切った。
一年生から六年生のブルーの集団が竜馬に駆け寄る。
バトンを落とした智美が、しゃくりながら、竜馬に抱きついた。
『リョウマくんありがとう!』『気にせんでよかよ』
『リョーオーマ! リョーオーマ!』
竜馬コールが湧き上がる。
竜馬の胴上げが始まった。
竜馬が、とびきりの笑顔で宙に舞う。
『リョウマ! あんたは最高や! 』
……母の声。
ブルーの集団が道を開ける。
『母ちゃん、来とったと?』
竜馬を抱きしめる母。
竜馬と母に歓声と拍手が鳴り止まない。
……照れ笑いする竜馬。
青色の集団の合間から、割烹着の袖で、涙を拭う祖母が見えた。
『完』
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