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小鈴が隣に座ると、土方は一番気になっていた事を聞いた。
「死神って言ってたよな?つまり俺の娘じゃないって事か?」
「……」
「小鈴、俺はどんな話をされても信じる。だから正直に話してくれ」
「……半分本当で、半分は嘘です」
そう言うと、ゆっくりと話し始めた。
「最初に言った通り、私は貴方とおしずとの子です。ただ……生まれる事が出来ませんでしたけど」
小鈴は確かに土方の子供だった。
しかし数度の逢瀬で、土方は小鈴の母親であるおしずの元へは通わなくなった。
「愛した男が、もう自分の元へと戻ってくる事はないと悲しみ暮れたお母様は……自ら命を絶ちました。私がお腹の中にいる事も知らず」
「そうか。俺はあいつが死んだ事にすら気づかなかったんだな」
後悔しているように目を伏せる土方の顔を、小鈴は何とも言えないような顔で見つめながら話を続ける。
「生まれる事すら許されなかった私の魂を救ってくれたのが主様でした。主様にスズという名を貰い、死神という仕事を与えられました」
「主?」
「閻魔様です」
死神とは、死が近い人間の側にいてその死に立ち会い、魂を閻魔大王の元へと案内する仕事だと小鈴は言う。
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