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「それで……どうして今になってトシに会いに来たのかな?」
「……一ヶ月前、母が死にました」
小鈴の言葉に、その場にいた全員がハッとなる。
「そうか……おしずは死んだのか」
土方は、少しだけ悲しげな顔をして呟いた。
「死の直前、私は初めて父親の事を教えられました。父親は土方歳三という人で、今は京にいると」
小鈴はそう言うと、ガバリと畳に手をついて頭を下げる。
「お願いします!私をここに置いてください!私には他に頼る人がいないんです!!」
「出てけ」
土方の冷たい言葉が部屋に響いた。
「いきなり現れて娘だなんて信じられるか。それにな、ここをどこだと思ってる?新選組の屯所だぞ。餓鬼なんか置けるわけないだろ」
確かに土方の言っている事は間違ってはいない。
しかし、だからといって身寄りのない子供をこの京の街に放り出すのはあまりに冷た過ぎる。
「トシ……彼女をここに置いてあげよう」
見兼ねた近藤が、二人の間に割って入る。
「何言ってんだよ、かっちゃん!?」
「トシ、俺達の仕事は何だ?この街を、この街に住んでいる人を守る事だ。こんな小さな子供が困っているんだ。それを見捨てるなんて事、しちゃいけないだろ」
「じゃあ、これから身寄りのない子供を全員引き取るのかよ!?そんな事出来る訳ないだろ!」
さっきまで冷静だった土方が声を荒げる。
反対に近藤は落ち着いたものだった。
「あぁ、それは不可能だ。だがな……彼女はお前の娘だろ?」
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