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「……副長、本当にあの娘は副長の娘なのでしょうか?」
出ていった土方を追いかけた斉藤は、副長室で仕事をしている土方に問うた。
斎藤はいまだに小鈴が何者かの刺客ではないのかと疑っている。
「さぁな。ただ、六年くらい前におしずという女と会っていたのは確かだな。それに……」
「それに?」
「あの小鈴って女……」
「本当に土方さんの娘なのかな?」
近藤と二人きりになった時、沖田はずっと抱えていた疑問をぶつけた。
近藤は小鈴が土方の娘だと信じているようだが、沖田もあの娘が言う事全てを信じる事が出来ない。
「あぁ、多分な」
「何故、そう思うんですか?」
「あの子、トシの小さい時とそっくりなんだ」
「え?そうなんですか?」
「トシの小さい頃はなぁ、そりゃもう可愛くてな。よく女の子に間違えられてたよ」
最初にあの娘を見た時にはびっくりしたのだと、近藤は言う。
「だから、あの子をほって置けなかったんだ。小さい時のトシを思い出してな」
「ふーん」
「何だ、お前も反対なのか?」
「そんな事ありませんよ。父親な土方さん、面白そうだし」
いきなり五歳の娘の子持ちになった土方。
うろたえる土方を想像して笑みを浮かべる。
「ま、でも一応釘を刺しとかなきゃな」
小さく呟いた沖田の言葉は、近藤に届かなかった。
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