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さすがに小さな女の子と他と隊士達を一緒に住まわせる事は出来ないという事で、寝起きは八木家の人達と一緒にしてもらう事にした。
沖田は小鈴が一人でいる所を見計らって声をかける。
「良かったね、お父さんと一緒に住める事になって」
「あ、さっきの……」
そういえば、まだ名乗っていなかった事を思い出す。
「私は沖田総司。君が生まれる、ずぅっっと前から土方さんと一緒にいたんだよ」
「あ、そうなんですか」
少し言葉に棘を感じるが、沖田の顔は笑顔だ。
「ま、私としては貴女が土方さんの娘かどうかなんてどうでもいいんですよね」
「……」
「素直に答えるとは思っていませんが、一応聞いておきますね。……貴女、何者ですか?」
「何者って……私は土方歳三の娘で……」
「貴女、本当に五歳ですか?貴女の言動はとても子供の物とは思えませんよ」
初めて会った時から沖田は違和感を感じていた。
確かに見た目は子供。
しかし話し方や話の内容、所作は大人のそれで、それを不審に思っていたのだ。
「ま、いいや。けど、これだけは言っときますね」
それまで微笑みを浮かべていた顔からスッと表情を無くし、鋭い眼差しで沖田は小鈴を見つめた。
「もし……土方さんに危害を加えるような事があったら……………………………殺しますから」
部屋の中が一瞬にして凍える。
その言葉は冗談や大袈裟ではない。
本気で言っているのだ。
「話はそれだけです。それじゃあ、これから仲良くしましょうね」
ニコリと表情を緩めると、沖田は部屋から出ていった。
小鈴は、彼が出ていった襖を暫く見つめる事しか出来なかった。
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