992人が本棚に入れています
本棚に追加
/140ページ
「あ、としぞーだ!」
壬生寺に行くと、近所の子供達が遊んでいたらしく、土方の姿を見つけて駆け寄って来た。
「呼び捨てにすんじゃねぇよ。お兄様と呼べ」
「……としぞー、いくらなんでもお兄様はないよ。良くておじさん」
土方の言葉に呆れたように返す。
いつも通りの乱暴な言葉遣いだが、子供達は怯える事もなく楽しそうに土方と接している。
土方も心なしか顔が緩んでいる。
「ねぇねぇ、そーじは?最近、そーじ来てくれないんだけど」
「あいつは風邪で寝込んでんだよ。治ったら、顔見せるよう言っとくよ」
楽しそうに話している土方達を、小鈴は少し離れて見ていた。
すると子供の一人が小鈴に気づいた。
「ね、あの子は?」
子供が土方に問い掛けると、土方は小鈴を手招きして呼んだ。
「こいつは俺の娘で小鈴っていうんだ。仲良くしてやってくれ」
土方の紹介に、小鈴はびっくりして見上げる。
「あの……」
小鈴の正体を知った今でも娘だと紹介したのだ。
「ほら、これで菓子でも買ってこい」
土方は子供達にお金を渡すと、子供達は嬉しそうに駆けて行った。
「はぁ……やっと静かになったな」
子供達の姿が見えなくなると、土方はため息をつきながら小鈴を見る
「さて……お前からは色々聞かなきゃならん事があるんだが、話してくれるか?」
「……はい」
土方は石段に腰掛けて、隣に座るよう促した。
最初のコメントを投稿しよう!