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「本当は死神は対象者と接触はしないんです」
本来、死神は対象者の近くに潜んでいて、その時が来たら魂を回収する。
「だったら、何故俺の前に?」
「……分からないんです」
小鈴は両親を恨んでいた。
特に父親である土方の事は、この男が母親を捨てなければ自分は生まれる前に死ぬ事は無かったのに……と何度も思った。
次の仕事が土方だと聞いて、自ら手にかけてやろうかとさえ思った。
しかし……
「最初に地上に降りて、貴方を見た時不思議な気持ちになったんです。憎かったはずなのに、何か懐かしい感じがして……」
気づいたら屯所の前にいて、沖田に話し掛けられていた。
「……ごめん……なさい」
全てを話し終えて、小鈴はポロポロと涙を零した。
「何で謝る?」
「だって……私は貴方の、娘じゃない」
人間でもなく、土方にとっては死をもたらす不吉な物。
「謝らなきゃならねぇのは俺の方だろ。悪かったな、小鈴」
自分の軽はずみな行動で、二人の人間を不幸にしてしまった。
「本当は、今ここで俺の命を差し出すのが筋ってもんだろうが……」
「嫌です!私にはもう貴方を殺せません!」
「……俺もまだ死ぬわけにはいかないんだ。すまん」
土方には、まだやらなければならない事がある。
それを為すまでは死ねないのだ。
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