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夜の田舎道は本当に暗い。
月明かりもうっすらとしか夜道を照らしていないし、
慣れてなければ家までたどり着けるかもわからない。
捜索願いなんて出された日には村中の笑い者だ。
まぁ、父さんがいなくなってから家に待ってる人なんていないけどね…
たまに何かに見られてる気もするけど、僕はオカルトの類いは信じないことにしている。
もし仮にそれが幽霊だったとしても。それはきっと、僕を産んですぐに亡くなってしまった母さんだと思うことにしよう。
…と、普段から言い聞かせているわけで。
だってこわいじゃないか。
あまり記憶にないとはいえ、実の母親が愛する息子を怖がらせたりはしないだろう。
(懐中電灯、持ってくればよかった…)
静かすぎる夜道に僕の足音が吸い込まれて消えていく。
いつもならそれの繰り返し。
だけど…
もうすぐ家だというところで僕は気づいてしまった。
(つけられてる…)
微かに聞こえる、もうひとつの足音。
僕の音に紛れさせるように、ペースを合わせているみたいだ。
一瞬頭にバトル挑戦者かも、と考えが浮かんだがすぐに振り払う。
―この距離ならデバイスが反応するはずだ…
挑戦者じゃない。
もちろん幽霊でもない。
自慢じゃないが、うちは田舎な村の中でも一二を争うくらいへんぴな場所に建っている。
つまり、この時間にこの道を歩くのは僕だけだ。
(やばいやばいやばい…)
ご近所の誰かが用事で来たのなら、声くらいかけられそうなものだ。
僕は逃げ出したくなる気持ちを押し殺し、一気に後ろを向いた。
龍「誰だっ……!!」
振り向いた…
振り向いたはずだ。
風を切る音。
通りすぎる何か。
僕が認識できたのはそれだけだった。
直後、意識が遠退き、上下がわからなくなって。
何が起きたのかもわからないまま、僕は気を失った……
………
……
…
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