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…夢を見ている。
まだ小さかったころの僕が、父さんのバトルをアリーナ席から眺めている。
あぁ、これは大会決勝のときの記憶だ。
相手が使うのは遠距離追尾型のミサイルと近接用のソード。
サルファは後ろから飛んでくるミサイルも、先で待ち構えるソードも、まるで見えているかのように全てを避けて、相手に左右二本の鞭でダメージを与えていく。
深紅のスーツが描く軌跡と、それより速くしなやかに跳ねる鞭から生じる火花が重なり…父さん…サルファは軽く、時に鋭く、リングのなかで踊っているようだった。
バトルと呼ぶにはあまりに芸術的な動きに観客はみんな静まり、ただサルファに目を奪われていた。
………
……
どれくらい時間が過ぎただろうか。
背中の痛みで気がつくと、僕は硬いアスファルトの道路に仰向けの状態で倒れていた。
(気を失ってたのか)
龍「う…」
後頭部にも痛みを感じる。
恐らく気を失ったのはこれが原因なんだろう。
まだ少しフラフラする…
ぼーっとする頭を抱え、立ち上がろうと体を起こしたとき。
ザッ
視界に紅い靴が入ってきた。
?「ダウンから3分46秒…赤点もいいところね…」
ふぅ、とため息が聞こえる。
?「まさか手刀一発で倒れるなんて…こっちが調子狂っちゃう」
声の主は再度ため息をつく。
…不意討ちじゃないか。
そう言ってやろうと視線を上げる。
龍「えっ…」
………
僕は目を疑った。
目の前には夢で見た、帝王と同じ深紅のバトルスーツ…
?「やっと起きた…バトルなら文句なしにKO負けね」
そしてそれを身につけ、僕を見下ろす女の子がいた。
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