受け継がれるもの

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受け継がれるもの

?「はじめまして、私はセロ」 長い銀髪を鬱陶しそうにかきあげながら女の子…セロは名乗った。 そして、ふん… と鼻をならし、不機嫌そうな顔で僕を見ている。 セロ「…とりあえず、立ったら?」 促され、慌て立ち上がる。 服についた草や砂を払っていると、不意にセロが近づいてきた。 龍「!!」 思わず後退りするとセロは一瞬目を丸くしたが、すぐに元の不機嫌な顔に戻った。 セロ「別に捕って食べたりしないわ。情けないやつ…」 やれやれ、と肩をすくめ僕を値踏みするように見ている。 いや、いきなり襲われてるし。それに、なんで襲われたのかもわからないし…。 というか、誰なんだ? そんなことを考えていると再びセロが近づいてきた。 セロ「あ、それとも…」 少し間をあけて セロ「気絶してる間に、殺した方がよかった?」 目の前の銀髪が怪しく揺れ、セロの口が歪む。 …その顔を見た瞬間、僕は恐怖に支配された。 そんなに年齢も変わらないであろう女の子が放つ、圧倒的なまでの威圧感。 手足が痺れ、冷たい汗が吹き出す。死という最大の絶望に呑まれ、僕は立っていることができなくなった。 セロ「ん、まだ大丈夫か」 崩れ落ちた僕を見てセロは満足そうに笑うと、僕の肩を叩き セロ「冗談よ。さっきも言ったでしょ」 そう言ってスーツを解除して離れた。 セロ「怯えちゃって…ふふっ、やっぱり情けない」 瞬間、安堵や苛立ち、羞恥…僕の中に色んな感情が渦巻き、思わず声を荒げていた。 龍「な、なんだよ!いきなり襲われてバカにされて!君は何がしたいんだよ!」 息を切らせ肩を上下させている僕を見ても、彼女の表情は変わらない。全く意に介さない様子で何か考えるように顎に指を当て セロ「んー…、それもそうか。それじゃ、説明するからアンタの家に行きましょ」 そう言って歩き出した。 セロ「家、こっちよね」 龍「そうだけど…、って、何を勝手に決めてるんだよ!それに、僕はアンタじゃない!僕の名前は…」 セロ「うるさい、吠えるな」 セロは僕の反論を手で制し、 セロ「三下の名前なんて興味ないから」 そう言って笑った。 セロ「いつまでへたりこんでるの?ほんとアンタって情けないね」 早くしないと置いてくわよ、と言って、セロは僕の家の方角へ歩いていく。 龍「ちょっと…だから勝手に決めるなって!」 僕は立ち上がり、先をいく彼女を追いかけた。
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