受け継がれるもの

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テレビから聞きなれた音楽と声。 龍(そっか、今日は火曜日か) バトルギアの放送日だ。 『さぁさぁ、今週も始まりました、バトルギア!』 彼女は僕の家に上がり込むとまっすぐ居間に。 現在…机を挟んだ僕の向かい側に座り、真剣な表情でテレビを見ている。 『先週は苦戦を強いられながらも勝利を納めたチャンピオンでしたが、今週の挑戦者は…』 セロ「よく見ててね」 セロが口を開く。が、視線はテレビから外さない。 龍「…は?」 毎週楽しみに見てるから別に見るのはいいんだけど。 だけど、セロはなんか空気が違うな… セロ「……」 大嫌いなものを見るような目。 …軽蔑? 違う、これは… セロ「バトルギアなんて、無くなればいい」 憎悪だ。 自分もソルジャーなのに、バトルギアが嫌い? 龍「変なやつ」 セロ「いいから、だまって見る!」 わかったよ、と軽く返事をして、僕も視線をテレビに戻した。 『あーっと!挑戦者、チャンピオンをコーナーに追い詰めた!』 挑戦者の武器はナックル。チャンピオンは二本のソードだ。 挑戦者は善戦し、ダメージを負いながらもチャンピオンを追い詰めている。 龍「この挑戦者、強いな」 セロ「……」 一瞬僕に視線を向け、そして。 ピッ 龍「え、ちょっと!いいとこなのに!」 無言のままテレビを消すと、僕の方に向き直った。 セロ「これ以上は時間の無駄よ。チャンピオンが勝つわ。まぁ…」 所詮おままごとだけど、とセロは笑った。 龍「え?おままごとって…二人とも凄かったじゃないか。何が不満なんだよ」 急に襲ってきたり、現チャンピオンの戦いをままごとと言ったり…なんなんだよ、こいつ! セロ「…はぁ、不満ね」 セロは少しムッとした表情の僕を一瞥し、銀髪の毛先をくるくるといじりながら面倒くさそうに答えた。 セロ「当然、全部」 龍「へ?全部って…」 言い切る彼女に呆気にとられ、少し声が変な感じになる。 セロは、ふぅ…とため息をつき、言葉を続けた。 セロ「チャンピオンの戦い方も挑戦者の戦い方も、そして」 龍「っ!」 身を乗り出し、僕を指差す。 セロ「二人の戦いに疑問を持たず、楽しそうに見てたアンタも」 龍「ぼ、僕も?」 セロ「そ。だから…」 グルンっ! 体が宙を舞う。 ドン! 背中を打ち付け咳き込む。 セロ「私が、鍛えてあげる」
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