受け継がれるもの

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龍「げほっ…き、鍛えるって…いきなりど…いうことだよ」 背中をうって咳き込み、まともに喋ることができない。 セロ「そのままの意味よ。アンタ、今の私の動き…見えなかったでしょ?」 言いながらセロが手を差し出す。 セロ「立てる?」 龍「…一人で大丈夫だよ」 僕は手はとらず体を起こし、座り直す。 セロ「ん。じゃあ、今から早速始めるから」 そう言ってセロは部屋から出ていこうとした。 龍「ちょっと待ってよ!いきなりすぎて訳がわからない。というか、君にそんなこと頼んだ覚えはないよ!」 僕の言葉に彼女は少し寂しそうな顔をした。 セロ「…約…だから」 龍「え?」 聞き返したときにはすでにセロの表情は元にもどっていた。 セロ「…なんで私がアンタのお父さんのスーツ着てるか、知りたくない?」 言いながらデバイスを起動し、スーツを装着する。 龍「やっぱり…」 父さんのスーツなのか。 でもなんで彼女が? そんな考えを見透かしたようにニヤリと笑い、 セロ「私から一本とれたら教えてあげる」 そう言うとセロは庭がある方向へ歩き出した。 セロ「まぁ今のアンタじゃ100年かかっても無理だけどね」 ひらひらと手を降り、やる気になったら庭に来て、と言い残し彼女は行ってしまった。 後には静けさが残る。 (…なんか、いきなりすぎて頭がぐちゃぐちゃだ) 一旦、状況を整理しよう。 セロと名乗る少女…いや、年は同じくらいか。 セロはいきなり現れ、僕に襲い掛かった。だけど… (特に大きな怪我はない。それに…) 悪意を感じない。 きっと彼女が本気なら、僕は最初に会った時にやられてる。 (あとは、あのスーツ) セロは父さんのものだと言ったが、果たして本当なのか? 伝説と言われたスーツだし、同じチューニングのものがあっても不思議じゃない。 かといって、彼女が僕を騙すことのメリットもなさそうだ。 (メリットといえば、なんで彼女は僕を鍛えるんだ?) それこそ意味がわからない。 敵意は感じない、騙す意味もないし…なにより (どこかで、会った気がする) ますます訳がわからなくなって、僕は頭を抱えた。 …ばたばたばたっ! セロ「ちょっと!いつまで待たせるの!?」 龍「うわぁっ!」 半泣きのセロが戻ってきた。 おかげで思考が中断する。 龍「いや、行くとかいってないし…」
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