呪われた少年

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「シュウ逃げて!!」 目の前に広がる光景に少年は動けずにいた。 頭から血を流した母親 腕だけになった父親 そして、それを成した張本人である白銀の毛を持つ狼に。 少年は母親に毎日のように 僕も英雄になるんだ!! と言っていた。 街の端っこに住む少年は毎日のように街の外にでて、小さな獣を追いかけ回した。 少年は何故か魔法の力に優れていたため、ケガなどもなく、小さな獣を次々と仕留めていった。 そのたびに父親と母親から誉められる。 少年はその瞬間が大好きだった。 ある日、少年は森に入っていった。 両親からは絶対に入ってはいけないと言われていた。 魔獣がでるからと。 しかし少年は入ってしまった。 魔獣を倒せばもっと誉めてくれると思ったからだ。 そして――白銀の毛を持つ小さな狼に出会った。 「僕は英雄になるんだ!!お前なんて怖くないぞ!!」 少年はそう言いながら狼に向けて魔法を放った。 今までの獣は全てこれで倒せた。 しかし、今回は違った。 白銀の狼は、少年の手から放たれた魔法を軽々と交わし、その爪で少年を切り裂き、体当たりをかまして、少年を吹き飛ばした。 少年はドンッと木にぶつかり、木が少し揺れた。 何が起きたかわからなかった。 自分の体を見ると胸の辺りに5本の爪の後があり、えぐられていた。 しかし、不思議と痛みは無かった。 恐怖が痛みを凌駕したからなのだが、そんな事をしるよしもない少年はただ怖いと思った。 ――か? 「誰!?」 突如どこからか声が聞こえてきた。 ――聞こえるか? 今度ははっきりと聞こえた。 そして少年は気づく、声の出所が自分の頭の中だという事に。
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