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――シュウよ、少し体を拝借するぞ。
「誰!?だ…れ……な…………の……」
言葉を発しながらもシュウは自分の意識が遠のいていくのを感じた。
次にシュウが目を覚ました時、目の前には先ほどの狼の死体が転がっていた。
外傷などない
しかし、確かに死んでいた。
シュウは怖くなり、家へと逃げ返った。
「シュウ!!その傷はどうしたんだ!?」
「まさか、魔獣の森に入っていったの!?」
帰ってきた、泥だらけのシュウを見て両親が慌てて駆け寄ってきた。
シュウは体中に泥が付着しており、着ている服は所々破けていた。
それは、そこら辺で転んだとかでは決して出来ないであろう程に破け、汚れていた。
「ごめんな――」
シュウが謝ろとした時に、それは起きた。
何かが破られる音と同時に、父親の体が片腕を残して――なくなった。
何が起きたかわからなかった。
ボトッという音を立て、父親のものだった腕が床に落ちたが、シュウはただ立ち尽くしていた。
それはシュウの母親も一緒で、言葉も発しないで、ただ立ち尽くしていた。
「ゥワオォォォォ」
後ろから聞こえる遠吠えにより、我に帰った二人は同時に後ろに振り向いた。
そこには口元を血で赤く染め上げた白銀の巨大な狼がたっていた。
瞬間、母親が叫んだ。
「シュウ逃げて!!」
その言葉を発すると同時に、母親は狼の前足でなぎ飛ばされ、壁に激突して気を失った。
少年はただ震えていた。
父親の死を嘆くよりも、母親の安否を気遣うよりも、ただ怖かった。
目の前にいる白銀の狼が自分の方に向かってくる。
まるでスローモーションのようなその映像を最後に、再びシュウの意識は途絶えた。
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