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男がヒビに吸い込まれた直後、再び世界が揺れだした。
世界とは他の世界と交わってはいけないもの。
本来ならその世界にヒビが入る事などありえないのだから、ミカエルの攻撃の凄まじさが伺える。
しかし、それは世界自身の修復能力なのだろうか。
ミカエルの攻撃によりヒビ割れていた世界はすぐに元通りとなった。
「ハァ……ハァ……」
肩て息をしながらも剣を天高くに突き上げる。
ここは天界なのだからそもそも太陽などという概念などは存在しないのだが、それでも周りからはその剣に一筋の光が差しているように見えたという。
その神々しさは、天使を超え、神にまで見える。
ミカエルが叫ぶ
「我らの勝利だ!!」
と
それを聞いて少し間を置いてから、あたりからまるで爆発音のような歓声が上がった。
周りの天使達は次々と武器を投げ捨て、傷ついた体で抱き合い、勝利の喜びに浸った。
そんな中、一人の天使がミカエルに近づいてきた。
「ミカエル様。これでよろしいのでしょうか?サタンの肉体は破壊しました。しかし幽体までは破壊出来ていません。もしも--」
天使がそこまで言った所でミカエルが言葉を遮った。
「確かに幽体は破壊できなかった。しかしやつは世界のヒビに吸い込まれていった。仮に生きていたとしても、恐らくは、世界と世界の間の何もない世界でさまよい続けるであろう。幽体となればなおさらそこから抜け出す事など不可能だ」
そう言うとミカエルは下がってよいと言わんばかりに「問題ない」と一声かけ、別の方向を向き、天使は一礼し、歓喜の輪の中に戻っていった。
ミカエルはわからない
長き戦争が終わった事に、終わらせた事に喜びと疲れが同時に溢れ出し、冷静さを欠いていたから。
周りの天使達はわからない
長きに渡る戦争に自分達が勝利した事を噛み締めていたから
強大なる悪の王の生存を認めたくないから
しかし、サタンは生きていた。
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