プロローグ

4/5
前へ
/28ページ
次へ
時は少しだけ戻り、ミカエルがサタンを貫いたその瞬間。 ここは普通の人々が住む世界 ピシッ 音はしないが、そんな擬音が聞こえてきそうだ。 空と陸の間の何もない空間に突如としてそれは現れた。 数秒後、まるでパリンとでも言うようにそのヒビは割れた。 それは異様な光景だった。 青い空に緑が繁る陸。その間のただ一カ所だけ空間が裂け、闇さえ吸い込みそうな、まるでブラックホールのような黒さがそのただ一カ所にだけあった。 「ぐ……」 苦しそうな呻き声をあげ、そこから吐き出されたものがあった。 サタンだ。 「ここは……狭間の世界では無いらしいな……とりあえず何か生物に転移しなければ……肉体の維持も……限界が近い……」 自分の腹に空いたドデカい風穴を見ながらサタンはそう言った。 「オギャアアア」 あたりはロウソクの灯りしかない、薄暗い部屋の中、その鳴き声が響き渡った。 新たなる生命をベッドの横に立つ産婆が優しく抱き上げると、それをベッドの上に横になる女性に手渡した。 女性はそれをまるで自分の心臓かのように優しく抱き上げ、涙を流しながらそっと口づけをした。 バンッ 勢いよく開いたドアが壁にぶつかりやかましい音を立てた。 開いたドアから一人の男が息をきらしながら部屋に入ってくる。 「生まれたのか!?」 肩で息をしつつも興奮した声で男は訪ねた。 部屋にいた女と産婆は二人同時にニコリと笑い、頷いた。 「ほら、あなた見て、元気な男の子よ」 女性はそういい、未だ泣き止まぬ赤ん坊を優しく抱き上げ、男に手渡した。 「おお!!なんと元気な事か!!決めていた通り、この子の名前は‘シュウ’でいいな!?」 相変わらず興奮覚めやらぬ声でそう言うと、女はただ微笑みながら頷いた。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

105人が本棚に入れています
本棚に追加