当主が背負う物

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追撃の可能性を考慮し、孫堅軍は僅かな休憩を取ると出立した。 夕暮れに染まる大地を進む孫堅軍。 疲労のためか、誰もが無口になっている。 そんな彼らの耳に入ってきた騒音。 「馬の蹄の音、百や二百ではないですぞ」 「まさか、追っ手に先回りされたか」 黄蓋の言葉に反応し、驚きの声を出す朱治。 「まじいぞ親父、兵は疲労しきってんだ、戦闘どころじゃねえぞ」 口々に出る言葉を聞きつつ、冷静に前方から来る集団を険しい表情で見つめる孫堅。 その瞳に〝孫・甘〟の旗印が映った瞬間、安堵の表情が浮かんだ。 「安心しろ、ありゃ味方だ」 との言葉に、皆は歓喜を挙げた。 「久々に会うな、守りに長けた虎の息子によ」 子供のように嬉しそうな声を出し、馬を走らせた孫堅。
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