伝国の玉璽

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「……これより辛い事も経験しまするが、虎の魂を継ぎし策若様と権若様ならば、乗り越えられると信じておりまする」 何らかの覚悟を決めたように言葉を紡ぐ祖茂。 手綱を引き、馬を後方に向けた祖茂は一言。 「孫堅様!!これにて、お別れにございまする」 そう叫び、敵陣に向かい走り出した。 「祖茂ぉぉぉお!!」 馬を止め、祖茂を追い掛けようとする伯符だったが。 朱治と横蓋が伯符の乗る馬の手綱を握り締め、半ば強制的に離脱させられた。 孫堅達の身を守るため、敵陣に突撃した祖茂に触発され戦った兵士達も居たが、圧倒的な数の前に命を散らした。 矢で射抜かれ、体を斬りつけられ、それでも戦い続けた祖茂。 息を整え、天高く昇る陽を見上げし彼の体を数本の槍が貫いた。 「殿とその子供のため死ねる……何と幸せ者であろう……か」
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