第1章 囚人の思い

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穴が空いたコンクリートの壁にもたれ掛かりながら、レンは思った。 ここは、刑務所の中。 罪人が、半分以上の自由を奪われ罪を償う。 或いは、罰を受ける場所。 穴が空いたコンクリートの建物。 中には、幾つもの小部屋があり、その内の一つがレンが自室として使っている小部屋だった。 この建物以外に、もう一つ小さな建物がある。 その建物には、穴は空いておらず、それどころか、窓すらなかった。 その代わりに、重く頑丈そうな大きな鉄の扉が一つついている。 その建物のことは、この刑務所にいるレンを含めた囚人たちは、誰一人として知らなかった。 一方、外には広く広大な野原が広がっている。 風がそよぎ、小さな菜の花々が揺れる。 が、その野原は建物の周辺を囲むようにして地面に刺さっている錯によって半分に仕切られていた。 まるで、林檎に刺さったフォークのように、錯は地面に深く食い込んでいて、見るからに逃げ出す隙間などなさそうだ。 しかし、レンは諦めなかった。 毎日、錯にたどっては歩き、逃げ出せそうな穴を、隙間を探した。 が、しかし、やはり錯は堅く重く地面に刺さっており、隙間など何処を探しても見つかりそうになかった。 .
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