序章 神のいないニホンの裏側で

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「洗いざらい話してもらおう」 男がそう言った。 ここは、薄暗い空間だ。そして、俗に言う拷問部屋だ。 彼の目の前には、椅子に体を縛り付けられた女性がいる。 年齢は二十代後半で、髪は腰と肩の間くらいだ。顔は本来は端正なのだろうが、今まで受けた拷問のせいだろうか。苦痛に満ちたしかめっ面だ。 「さあ、知ってる事を話せ」 「……、……」 女性は黙秘を決め込んだ。 見かねた男は怒鳴る。 「話せぇええっ!!」 「……、……」 それでも女性は黙っている。 「チッ」 男は舌打ちをした。 こんなやり取りがかれこれ一ヶ月続いている。 両者は互いに精神的に参っていた。 (さっさと吐けばいいのに。なんで、黙ってやがる?) 男はそう思う。 だが、これ以上の拷問は無駄と思い、男は拷問部屋を出た。
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