150人が本棚に入れています
本棚に追加
「……―二人は恋人同士…?」
眉を垂れ下げて
不安げに問う。
「まったく違う。」
「うん、そうだよ」
同時に言う二人。
女はわからない顔をする。
わからなくていい。
この二人はバカなのだ。
沙由奈はそんな女に聞いた。
「名前は?」
「………桐瀬 茉衣(キリセ マイ)」
「きりせ?………んー」
「なんだよ真葵。
やっぱりお前、遊びすぎ。」
「最低だな。坊主にしろ。」
梓葵と沙由奈が言う。
意外に気が合うのかもしれない。
真葵はそんな二人を
睨み付けた。
言っていなかったが
真葵の睨みはかなりのもの。
喧嘩が強く
族に誘われるほどに強い。
普段の笑顔は
猫を被っているということだ。
そんな睨みを効かされた二人は
何故か互いに握手をかわし
"では、例の件よろしく"と誤魔化した。
誤魔化し方が下手である。
真葵は女―…桐瀬にいう。
「思い出した!
中学2年のとき同じクラスだった子だぁ
髪が短くなってるから
わからなかったよぉ」
ヘラヘラ笑う真葵。
桐瀬は頬を染めた。
「……あの、わたし…ずっと、
ずっと北澤くんと話したくて、
明日は…明日はって思ってたら
卒業しちゃって……………高校別になっちゃって
街で偶然みかけたら
……後をつけてて…
それから手紙を写真を………」
桐瀬は
足を震えさせて言い終えた。
真葵は桐瀬に手を伸ばす。
桐瀬は目をつむり身構えた。
そしたら 桐瀬は
頭に暖かさを感じた。
目を開くと
真葵の笑顔。
「そんなに見ててくれたんだね
気づかなくてごめんね。」
桐瀬は目を見開いた。
こんな事をして
一歩間違えば……いや、
今でも警察へ通報すれば
立派な犯罪者だ。
なのに
優しく謝ってくる真葵。
桐瀬は涙を流し始めた。
最初のコメントを投稿しよう!