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「リュウ、着いてきて。」
成瀬にそう言われてやってきたのは城下町だった。
先程までいた森の中とは違い、とても賑わっている。
「おい、成瀬。ここで何す―――」
何をするんだ?
聞こうとしたときだった。
前を歩いていた紫乃の足が止まる。
「……言ってなかったけど。」
その声はなぜか小さかったため、後ろにいたリュウには上手く聞き取れなかった。
「は?なんか言ったか?」
すると紫乃は振り替える。
「……成瀬紫乃は仮名。本名はほかにあるの。…ロッティって呼んで。」
名前がふたつあることに驚いたわけじゃなかった。
ただ、
こいつにとっての現実はこっちの世界だったんだな、って思っただけで。
別にそれで悲しいわけじゃない。
だけど。
「………本名がこっちの世界のものってことは、お前は本当に異世界の人間だったんだな…」
紫乃はリュウの言葉を聞くなり、俯く。
「………裏切るようなことしてごめん…」
謝罪した紫乃はとても辛そうで。
まるで自分が裏切られて傷ついているような表情。
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