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「……朝霧くんは…?」
紫乃はめずらしく表情を変え、心配そううに笠を見つめてきた。
「あー…、俺、今日はバスで行くとこあるから。それ、使えよ。」
紫乃は傘を受け取る。
「…ありがとう。……これ、あげる。」
そういった彼女の手に握られていたのは青い石。
「?…あぁ、ありがとう、それじゃっ――」
鞄を頭の上に乗せ、雨の中へ飛び出そうとしているときだった。
「待って!………バス停まで傘に入っていったら…?」
こんなことが許されるのか。
笠はずっと考えていた。
親友の彼女と相合傘、といってもいいような状況で。
貸した傘に二人で入っていた。
バス停は学校の門を出て100メートルぐらい歩いたところにあった。
その100メートルの間沈黙。
笠は会話に困っていた。
すると、紫乃が口を開いた。
「バスでどこに行くの?」
「……別に。……てかもうここまででいいよ。」
バス停のすぐ近くまで来たところで、笠は傘を出た。
バス停の時刻表の前まで走っていった。
しかし、振り向くと彼女はこちらに向かって歩いてきていて。
「おまえっ、帰りこっちだっけ?」
「ううん。だけど、ここ、屋根ないからぬれちゃうでしょ?」
そういって紫乃は笠のほうに傘を傾けた。
手に握っていた青い石が熱く感じた。
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