第一章>>>見知らぬ世界

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「……朝霧くんは…?」 紫乃はめずらしく表情を変え、心配そううに笠を見つめてきた。 「あー…、俺、今日はバスで行くとこあるから。それ、使えよ。」 紫乃は傘を受け取る。 「…ありがとう。……これ、あげる。」 そういった彼女の手に握られていたのは青い石。 「?…あぁ、ありがとう、それじゃっ――」 鞄を頭の上に乗せ、雨の中へ飛び出そうとしているときだった。 「待って!………バス停まで傘に入っていったら…?」 こんなことが許されるのか。 笠はずっと考えていた。 親友の彼女と相合傘、といってもいいような状況で。 貸した傘に二人で入っていた。 バス停は学校の門を出て100メートルぐらい歩いたところにあった。 その100メートルの間沈黙。 笠は会話に困っていた。 すると、紫乃が口を開いた。 「バスでどこに行くの?」 「……別に。……てかもうここまででいいよ。」 バス停のすぐ近くまで来たところで、笠は傘を出た。 バス停の時刻表の前まで走っていった。 しかし、振り向くと彼女はこちらに向かって歩いてきていて。 「おまえっ、帰りこっちだっけ?」 「ううん。だけど、ここ、屋根ないからぬれちゃうでしょ?」 そういって紫乃は笠のほうに傘を傾けた。 手に握っていた青い石が熱く感じた。 .
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