第一章>>>見知らぬ世界

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「……?」 なぜ俺じゃなくて成瀬に怒ってるんだ? 普通は彼女を責めないだろ。 「……まだ早いはずだろ。」 「………」 「とりあえず近づくな。」 結斗が紫乃へ向かってそう言う。 笠には会話の内容が何の事だかさっぱりわからなかったが、紫乃には伝わったようだった。 「――今しかないの。………ごめんなさい。」 長い沈黙のあと、紫乃はなぜか謝った。 そして顔をくしゃと辛そうに悲しそうに歪ませる。 「お前、まさか……!!」 突然結斗が何かを察したように紫乃を見つめる。 「……えーっと……なんか会話の内容よくわかんないし、俺退場したほうがいいかな…?」 カップルの話にはついて行けんっ、と心の中で思いつつ、控えめに言ってみる。 すると紫乃はこちらへ向き直り、こちらへ向かってきた。 「おいっ、紫乃!!」 何メートルか離れたところにいる結斗が叫ぶ。 そして焦ったように向かって走ってくる。 「?」 なんだこの状況。 なんで成瀬はこっちにくる? なんで結斗はあんなに焦ってる? 「……朝霧くん。さっき渡した石、手に握ってるよね?」 ……? 青い石のことか…? 「えっ?…あぁ。………それより、結斗のやつ、どうしたんだ?」 すると紫乃は右手を差し出してくる。 「石を握ったまま、私の手を取って。」 「え?…あ、あぁ。」 質問は無視か、と思いながらも咄嗟に手を取る。 ――すると、石を握っていた手の隙間から青い光が漏れはじめた。 「―――笠っ!!!」 結斗の声が聞こえる。 そこで、意識は途切れた―――。
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