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夜気の中に音が混じっている。
都会の深夜に無音が訪れる瞬間が果たしてあるのだろうか?
1秒でいい。
いや0・1秒で十分だ。
無音の瞬間が欲しい。
タカムラは都会の闇の中で無音を欲する。
様々な機械音がタカムラを苛む。
車の音。
冷却装置の音。
冷蔵庫の音。
時計の音。
時計の針が動く音。
時計の歯車が回転する音……。
闇の中でタカムラが耳を澄ますと機械の音ばかりが耳につく。
無機質な音質がタカムラの耳に食い込む。
食い込んで離れない。
鼓膜を冷酷な機械が掴んでいる。
吐き気がする。
吐き気がする事自体が、もう病んでいる証拠だ。
タカムラは最近、全く眠っていない。
それ所か生まれてからずっと自分が、眠った事がないような気がする。
この都会に溢れる機械の音さえ全て止めば自分は安心して眠る事ができる。
タカムラが闇の中で、そう思う。
タカムラが少し動くとまた耳障りな機械の音が気になり出す。
眠れないタカムラは、ただ闇を眺めて朝を待った。
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