哀しきコーヒー

4/12
前へ
/199ページ
次へ
涼子が店を出た瞬間、店内の喧騒が耳につき始めた。 日曜日の店内は、カップル達でにぎわっている。 カップル達の談笑が、桔平の耳に木霊する。 まるで、ポップなラブソングのように。 桔平は窓際の席で、踏み潰されたゴキブリのようにうなだれている。 その目に、表の通りを歩いてくる涼子の姿が映じた。 その凛呼とした顔は、いまだかつて見たことがないほど美しかった。 ユリの花のようだな…… 桔平はぼんやりとそんなことを思った。 まっすぐに前を見据えて、涼子は歩いてくる。 涼子が近づいてくるにつれ、桔平は鼓動の高鳴りを覚えた。
/199ページ

最初のコメントを投稿しよう!

142人が本棚に入れています
本棚に追加