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「アリシア、今日から彼がおまえの世話をしてくれることになった。仲良くするんだよ」
お祖父様が幼い私に紹介した彼は、その整った顔の表情一つ変えずに頭を下げた。
綺麗な顔をしているけど、無表情で怖くて、私は今まで私の世話をしてくれていた女中の影に隠れたのをよく覚えている。
彼はいわゆるアンドロイドという生き物だった。
生き物と呼べるのかも謎な物体だ。
世界に数台しかない高価なものは、彼のように人間にそっくりな容姿を持ち、肌も人間そのもので、一見すればアンドロイドとは見えない。
ただ…心は持っていない。
だから表情は変わらない。
無表情の無機質な、言われたことだけをそのまま行うロボットそのものだ。
そして人間のように年をとって老けていくこともない。
動くエネルギーも体の中で作られて消化されてを繰り返す。
その機関にガタがくるまで動き続ける。
私はそんな彼が気持ち悪くて仕方がなかった。
私には両親がいない。
生まれてすぐに亡くなり、私は顔も知らない。
身内は足の悪い、車椅子で生活をしている祖父だけ。
祖父には私の世話をすることができない。
私の世話係りをしていた女中が、年だからと辞めることになり、それをきっかけに、彼が買われてきた。
もちろん、私が彼になつくはずもない。
それでも彼はアンドロイドだ。
主の命令に従うだけ。
私がどれだけ嫌がっても、主であるお祖父様に言われれば、その命令に背くこともない。
泣いて嫌がっても、私を抱えて部屋にいき、眠れるはずもないのに寝かしつけてきたり。
それに慣れるまでに何年かかっただろう。
今の私は17となった。
もう彼を怖れる子供でもない。
彼は人間に例えるなら22くらいの青年。
一生、そのまま。
彼の『時』が止まるまで。
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