第1章

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「あははは。やだーそれー。慶太には合わない~。」 舞...慶太...? なん..で? ズキズキする心臓が痛い。 塾から出るためには絶対に2人の座っている前を横切らなければいけない。 でも人もまばらなこの時間。 横切らなくても見つかるのは時間の問題かもしれない。 足がうまく前に出ない... ようやく意を決して足を前に出した途端 「綾?」 慶太の視線が私を捉えていた。 「あっ、あの、メール送ったんだけど、先に帰ろうと思って。取り込み中っぽいから今日は先に帰るね。」 そう伝えて、足早に2人の前を横切った。 言い逃げ? ううん。漫画みたいに「おい、まてよ。」って追いかけてきてくれないかな、なんて思ってた。 「おい!綾!」 ほら、やっぱり... にやける顔を必死で抑えて振り返ると、予想に反して慶太はソファから一歩も動いておらず、その表情は明らかに怒っていた。 「お前ってわけかんねぇ。帰りたきゃ一人で帰れば?」 そう言い放った。 えっ、なんで?なんでそうなるの? 舞のいる手前、動揺してるのを悟られたくなくて 「うん。帰るね。」 普通に聞こえるように、歯を食いしばってそう答えた。 「えー、慶太、その言い方かわいそ~。綾ちゃん、ばいばーい」 あははは。そんな舞の笑い声とバカみたいに明るい声が聞こえた....
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