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「一応さ、いつも一緒につるんでるヤツらにみせたかったんだよな。」
私の腕を掴んだまま、慶太がボソッと言った。
「...そっか。なんか、緊張しちゃったよ。あはは。」
「綾、自習室で勉強してくだろ?」
「あ、うん。」
時計を見るとすでに7時を回っていた。
うわっ、やばい。
全然時間ないじゃん。
「9時に自習室の入り口にいろよ。一緒に帰ろうな。」
「うん。分かった。」
”一緒に帰ろうな。”...
その言葉が嬉しくてしょうがないのに、緊張がその感情を上回ってひどく冷めた返答になってしまった。
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このころの私は自分の気持ちでいっぱいいっぱいで、慶太が私の返答で苦しそうな顔をしてたのに気づかなかったんだ。
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自習室の自席に着くと、ひどい疲労感が私を襲った。
めちゃくちゃ疲れた...
塾でしか会えないのに、緊張しすぎて今思い返してみても「うん」とか「わかった」しかしゃべってないんじゃないかな。
一緒に帰ろうって言われたとき、もっと嬉しそうにすればよかったかも。
でも、中庭での出来事はいやおう無しに、私と慶太との世界が違うことを感じることになった。
私の友達とは明らかにタイプ(特に外見...)が違うし、話してる内容も違う。
慶太との付き合いに一抹の不安を抱きつつ...
2時間の自習時間...なんて集中できるわけもなく。
あー、塾代高いのに。
お母さんごめんなさい...
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