第1章

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************* 「一応さ、いつも一緒につるんでるヤツらにみせたかったんだよな。」 私の腕を掴んだまま、慶太がボソッと言った。 「...そっか。なんか、緊張しちゃったよ。あはは。」 「綾、自習室で勉強してくだろ?」 「あ、うん。」 時計を見るとすでに7時を回っていた。 うわっ、やばい。 全然時間ないじゃん。 「9時に自習室の入り口にいろよ。一緒に帰ろうな。」 「うん。分かった。」 ”一緒に帰ろうな。”... その言葉が嬉しくてしょうがないのに、緊張がその感情を上回ってひどく冷めた返答になってしまった。 -- このころの私は自分の気持ちでいっぱいいっぱいで、慶太が私の返答で苦しそうな顔をしてたのに気づかなかったんだ。 -- 自習室の自席に着くと、ひどい疲労感が私を襲った。 めちゃくちゃ疲れた... 塾でしか会えないのに、緊張しすぎて今思い返してみても「うん」とか「わかった」しかしゃべってないんじゃないかな。 一緒に帰ろうって言われたとき、もっと嬉しそうにすればよかったかも。 でも、中庭での出来事はいやおう無しに、私と慶太との世界が違うことを感じることになった。 私の友達とは明らかにタイプ(特に外見...)が違うし、話してる内容も違う。 慶太との付き合いに一抹の不安を抱きつつ... 2時間の自習時間...なんて集中できるわけもなく。 あー、塾代高いのに。 お母さんごめんなさい...
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