◎Prologue

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また桜が舞う季節が廻ってきた。 私がこの世界に来て一年が経とうとしている。 「一年ってあっという間なんだなぁ‥てことは私18歳じゃん。げ、ますますおばさんに近づく‥」 誰も居ない部室でぽつりと本音を独り言。 この一年間いろんな事があった。 人生の危機 仲間との絆 人の温かさ そして何より―‥ 愛しい人が出来たこと。 ずっと一緒に居たいと思える人が出来た。 出来ることなら離れたくない。 でも私には時間はあまり残っていない。 そんなこと、誰よりも一番理解しているのは私だ。 だからこそ今の時間を大切にしていきたいと思う。 綺麗事かもしれないけど、皆だって大切な人が出来たらそう思うんじゃない? 私だって最初は馬鹿らしいって思ってたもん。 「‥あ、もう時間だ。行かなくちゃあの人のところに」 誰も居ない部室に響く私の声。 今日は初めてのデート。 うんとお洒落をして‥可愛いって言わせてやるんだ、あいつに。 期待と楽しみに胸を膨らませ私は部室を後にした。 部室から見える桜の木―‥。 その桜の木が私の背中を押してくれた気がした。
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