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変わらない日々
平凡な毎日
退屈な日常
打開などする必要はない
この、まるでぬるま湯に浸かっている状況に、
裏野誠章は満足していた
高校に入学して早二週間が過ぎ、
今までの生活が急激に変化すると思っていたが、
やっぱり中学校での生活と何ら変わりなく、
毎日毎日缶コーヒーを片手に一人屋上にむかう
*
左手に缶コーヒー
右手にケータイ
ケータイの画面には、裸の男が裸の女(複数)に縛り上げられ、
ムチやローソクであんなことやこんなことを・・・
時折グビッとコーヒーをあおる
エロムービーを見ながら甘いコーヒーを飲むこの瞬間が、
彼をつまらない日常から解放してくれる唯一の時間であった
これから挿入シーン―――
というところで、
彼のケータイに一通のメールが届く
「なんだよ。これからって時に・・・」
ぶつぶつ文句を言いながら受信ボックスを開く
《今日も家帰らねえから母さんにうまく言っといてくれよ》
・・・宛先は大和か
ふぅっと一つ息を吐く
返信をせずにケータイを閉じる
「・・・いつものことだ」
それはまるで自分に言い聞かせているかのようであった
誠章はうなだれたまま、
いつものように屋上への階段を一歩一歩昇っていく
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