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ドアを開けると、
桜の花びらと共に春の風が誠章の体をすり抜けていった
その直後に夕陽が目に飛び込んできて、
一瞬視界を失う
ぼんやりとだが視界がひらけてくる
―――手刷りに誰かがもたれかかっている
夕陽のせいで顔をとらえることが出来ず、
誠章は恐る恐る歩を進めた
気になる
今は放課後
それも下校時間ギリギリである
そんな時間に屋上にいる奴がいるなんて・・・
自分はどうなんだというツッコミを無視し、
また一歩と歩み寄る
「だれ?」
*
ハッとこちらの存在に気付いたその人は、
こちらの呼びかけに応えることなく誠章の横を走り抜けていった
呆気にとられた誠章はただただぼーっと突っ立っている
「この香り・・・」
春の匂いとはまた違った、しかしそれは人に不快感を与えない程度の量の香水
「おんなの・・・こかな?」
疑問を口に出す
けれどもそれは香水の残り香と共に春風に流されていった
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