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足取りは重かった
非常に重かった
一年生のクラスは新校舎の四階にある
エレベーターという便利な科学技術は教職員専用となっているため使用出来ない
さらに生徒が無断で使用出来ないよう今日は作動しないようになっていた
つまり、誠章は今階段を使って降りている
この微妙にツラい動作が足取りの重さに拍車をかける
「めんどくさいなぁ」
意味もなく愚痴をこぼす
聞いてくれる相手はいない
しかし自然と口からこぼれたということは、
これは本心に違いないと自分自身に言い聞かせる
「めんどくさい」
今度は自信をもってハッキリと言い切る
言い切ったところで事態が急変し、
スポーツ祭が中止になるなんてことはない
分かってはいるが愚痴が出る
人間とは不思議なイキモノだ
そんなことを考えながら誠章は階段を降りる
*
昇降口に近づくにつれて、グラウンドの歓声が次第に耳に届いてくる
私立高校に相応しい立派なグラウンドでは、
ちょうど短距離走の予選が行われていた
「うちのクラスは・・・」
グラウンドを見渡す
クラス毎にグラウンドを囲んで応援席を作るので、
グラウンドの熱気をそのまま白熱した応援へと変えることが出来るこの陣形
だが、どれが自分のクラスか一発では判断出来なかったため、
誠章は歩いて探すことにした
一学年10クラス
普通科 5
芸術・音楽科 2
スポーツ科 2
特進科 1
という構成
誠章は普通科
「まあ、ブラブラしてれば委員長が飛んで来るだろう」
嘆息混じりに呟いた
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