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「うん。今日はほんの挨拶のつもりだったんだ、本当だよ」 「いやいや……、挨拶ってそんな相手を馬鹿にした目でするものなのかっしょ?」 俺の呆れは軽く無視された。 「それじゃあ、今日の所はこの辺で。 足止めして悪かったよ。また学校で会おうか。青田、君」 「ちょ、ちょっと待てよ…… ってまるで人の話を聞いてねぇっしょ……」 波照間の背中を見送りながら、俺は言い様のない不安を覚えていた。 また訳の分からない奴が現れた……と。 「青田ん……」 袖を引かれた感触で輝欄に意識が向く。 輝欄の顔には不安がありありと見え、それが俺の胸を締め付ける。 あー、分かっているさ。心配なのは俺も同じだ。 二度あることは三度ある、どころではなく既に五度あった。 いつものパターンだ。 まず、変人が現れる。そこから意味不明な騒動に発展して、いつの間にか巻き込まれている。 「嫌になるなぁ~っしょ……」 俺は苦笑いをしながら、やれやれと首を振った。 輝欄を慰めるためにおどけてみたのだが、嫌になるのはかなり本音だ。
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