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誠に残念ながら、俺と輝欄はセントラルベイをあとにしていた。
今は家に帰る途中だ。
それも仕方のないことだろう。俺の短気のせいで、店員に喧嘩を売ってしまったからなぁ。
さすがに大手を振って街を歩けない。
幸いにデリシャスなスイーツは手に入ったので、俺の家で食べましょうと相成ったわけだ。
「だいぶ暗くなったなっしょ」
「そうだねぇ。でもぉ、もうちょっとでぇ、青田んの家に到着だよぉ」
住宅地ということもあって、周りの家は灯がついている。
その光が逆に、俺達の歩く街路を浮き彫りにし暗く染めているのだ。
だが怖いとも寂しいとも思わない。
隣りを歩く、輝欄の温もりを感じるから。
ふっふふ~ん、という楽しげな鼻歌が聞こえるから。
眼だけを動かし、輝欄の横顔を観察する。
いつもと同じ、俺を幸せな気分にしてくれる笑顔。
夜空を彩る星のように煌めく瞳。
ニット帽からはみ出る、クリームよりも柔らかそうな髪。
思わず吸い込まれそうな唇……
輝欄の全てが輝いていた。
その眩さは、住宅地の灯などと比較にならない。
そう。
輝欄のいるところだけが明るかった。
……
とまあ、彼女の可愛さを改めて噛み締めている間に俺の家に着いていた。
ふむ。続きはシュークリームを食べながらだな。
「青田ん早くぅ~!」
シュークリームが待ち遠しいのか、急かす輝欄。
俺は『はいはい』とやや投げやりに応えたが、口元が弛むのを我慢出来なかった。
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