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――
玄関に入る。当然のように家の中は真っ暗だった。
「ただいまーっしょ」
普段は絶対に言わない言葉だ。
この家の住人は俺一人であり、誰も迎えてくれることはない。
それでも口にしたのは勿論……
「おかえりなさぁ~いぃ!!」
輝欄が一緒だからである。
本来、俺と共に家に入ったのだから今のやり取りはおかしいのだが、それこそが彼女らしさと言えよう。
家の冷たい空気も一気に温まる思いだった。
部屋に入り「さて何をしようか」と考えた時、輝欄がシュークリームの箱を差し出してきた。
眼がキラキラと輝いている……
食べたいのですね、分かります。
「先に手洗いからだっしょ」
「は~いぃ!」
おまいはお母さんですか、と自分に突っ込みながら俺も台所で手を洗う。
そして直ぐさま食器の準備をして、シュークリームを乗せた。
シューを挟んで対面にテーブルについた時には、輝欄はすっかり涎塗れだった。
「おいおい……、せっかくの可愛い顔が台無しじゃないかっしょ」
「だってぇ、美味しそ~なんだもん……」
照れるな照れるな。
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