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瀬能に睨まれてから、俺の口は封殺されていた。 人気がなく寂しい廊下を無言で歩き続ける。 通夜のような行軍だった。 短いようで誠に長い時間を歩いた末、周りから物音すらしなくなった。 そして、目的地についたらしい……の、だが。 「お、おいおい……、これ『虎青の大金庫』だろ!? 本当にここであってるのかっしょ!?」 瀬能は顔を向けるが、その後の反応がない。肯定も否定もしない。 つまるところの肯定なわけだが…… マジかよ…… 俺は目の前に聳え立つ重厚な金属の塊を見上げ、呆気に取られていた。 『虎青の大金庫』 その名の通り、巨大な金庫のことだ。 ただし、場所が高校の校舎内というだけで、その存在はこれ以上ないくらいに異様と化している。 ああ……全くもって不可解な物だ。 ここは単なる私立高校だぜ? 銀行のように大金があるわけでもないのに。 地下に作られる予定だった教会といい目の前の大金庫といい、虎青高校の創設者はよほど奇人変人のようだな。
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