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だが……
瀬能は無言のままだ。
人形と化したのか、ピクリとも動かない。
校舎の最奥に位置する寂しい金庫。その前で佇む人形。
冷たい空気が現実を希薄にしていく。
……
危ない危ない!!
俺まで不思議の国の住人にされるところだったぜ。
「……分かった。深くは聞かないっしょ」
本音を言えば、理由も言わない奴に協力したくなどない。
だが、ここまで関わってしまったのだ。今さら、はいさようなら、とはいかないはずだ。
「だけどな、金庫の中を探すとして鍵はどうするっしょ? アテはあるのか?」
それが第二の疑問だ。
倉庫代わりに使われているとはいえ、金庫は金庫だ。
鍵は掛かっているだろうし、キーロックだってあるはずだ。
セキュリティ全てを丸投げされたら、さすがに心が折れますよワタクシ。
しかし、俺の心配は杞憂となった。
「…………鍵……かかってない……」
「はあ!? そうなのかっしょ!?」
目を丸くせざるを得ない言葉だった。
なんという杜撰なセキュリティだ。
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