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考える暇も行動する余裕もなかった。
滑るように閉じていく扉は、
無情にも俺を外界から切り離す。
と、同時に金庫内部が暗闇に覆われた。
「うおっ!! 暗い!! 何も見えねぇ!!」
視界を覆う闇は不安を増幅させ、冷静さを奪い去る。
自分が三階にいるのを忘れて取り乱したため……
「おいおいおいおい……!!
って、うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
危うく落ちそうになる。
「あ……危ねぇ……」
背中が濡れて冷たい。
シャツが身体に張り付いて気持ち悪いったらない。
……だが、多少は頭が働くようになってきたぞ。
「携帯……。そうだ、携帯だ!!」
直ぐさま携帯を開く。すると、携帯が放つ淡い光で辺りが照らされる。
小さい明りだが、どうにか視界を確保したぜ……
それにしても、やはり人間には光が必要なのだなと思う。
一瞬光を奪われただけで、人間を人間たらしめる思考まで奪われるのだからな。
さて……、頼りない光ではあるが、一階に降りなければ。
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