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歩くのは慎重に、降りるのも当然ゆっくと。
上りの倍以上の時間をかけて一階に下りた。
この時、既に恐怖心は消え去っていた。
代わりに、怒りと戸惑いがないまぜになった感情が溢れてくる。
(瀬能の奴……俺を閉じ込めやがって……。まさか、教師か誰かが来たのか? だとすれば慌てて閉じたのかもしれないが……)
文句とも自問ともつかない呟きを内心で繰り返しながら、俺は扉を調べる。
外側同様に内部にも巨大なハンドルが付いている。
それから、扉に注意書きがあり読んでみると……
『扉を閉めると自動で照明が消えます。手動でつける場合は左側のレバーを使用してください』
目線を左へ動かす。
あった。このレバーを上げれば点灯するわけだな。
俺は当然、レバーに手を伸ばすが、ふと思い直した。
今、照明をつけるのは早計ではないか?
もしかしたら、本当に教師が近くにいるかもしれない。
下手な動きはしない方が良い。
「はぁ~……」
結局、様子見をするしかないのかよ……
大きな溜め息とともに、その場に座り込む。
携帯を閉じて再び闇へと身体を預けることに。
真っ暗闇も、瞑想するにはもってこいだ……
静かに、緩やかに、自分という存在が闇に溶けていく……
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