団欒ほりでい

3/7
前へ
/38ページ
次へ
私は父子家庭で育った。     私の母は私を産んですぐに亡くなってしまった。 父は朝から晩まで働き詰め。 兄弟が居なかったので、 学校から家に帰っても独りぼっちだった。     父と会うのは朝、 私が学校へ行く時に少し擦れ違う程度で…   寂しい気分になる時があったけど、父が必死で私を守る為に働いてくれているのが分かっていたから、我が儘なんて言えなかった。     家族の思い出は余り無いけれど、父と過ごしたあの一日は本当に幸せだった。   なぜ忘れていたんだろう。         ―…小学三年生の秋、 ある日曜日。   『今日は休みなんだ』   無口な父が私の頭を撫でながらポツリと言った。   『え!本当?』   『うん…たまの休みだ、 お前の行きたい所、言ってみなさい』   無器用にそう言うと、父は照れくさそうに頬を掻いた。 本当は飛び跳ねたい位に嬉しかった。   でも…
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加