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私は父子家庭で育った。
私の母は私を産んですぐに亡くなってしまった。
父は朝から晩まで働き詰め。
兄弟が居なかったので、
学校から家に帰っても独りぼっちだった。
父と会うのは朝、
私が学校へ行く時に少し擦れ違う程度で…
寂しい気分になる時があったけど、父が必死で私を守る為に働いてくれているのが分かっていたから、我が儘なんて言えなかった。
家族の思い出は余り無いけれど、父と過ごしたあの一日は本当に幸せだった。
なぜ忘れていたんだろう。
―…小学三年生の秋、
ある日曜日。
『今日は休みなんだ』
無口な父が私の頭を撫でながらポツリと言った。
『え!本当?』
『うん…たまの休みだ、
お前の行きたい所、言ってみなさい』
無器用にそう言うと、父は照れくさそうに頬を掻いた。
本当は飛び跳ねたい位に嬉しかった。
でも…
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