殺人鬼に花束を

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マクドナルドは 頭を金槌で殴られた様な強い衝撃を受けた。   暴力的な衝撃ではなかった。   『お礼と共に… 私を救ってくれた貴方に懺悔がしたかった。   いや、 最期に懺悔がしたかっただけなのかもしれません。 今まで自分が犯した罪を 洗いざらい貴方に話して死にたかっただけなのかもしれません。   どちらにしろ、 私のエゴ…ですね』   澄んだ汚れのない小さな笑い声は寂しくて、自虐的で… 仄暗い部屋に虚しく響いた。   気がつけば、 マクドナルドの両目からは 涙が止めどなく溢れていた。   『あ…ぁ…』   何かを彼に伝えなければならないのに、 声が、言葉が、思う様に出て来てくれない。   胸を掻き毟りたくなる程の焦燥感が身を焦がしていく。       ―瞬間、 仄暗い部屋に光りが差した。   重い鉄の扉が開き看守が『時間だ』、と短く告げた。   窶れきった男は軽く頷くと ゆっくり立ち上がる。 その細い手首には銀色に光る手錠が掛けられていた。     『刑事有り難う御座いました。 本当に、 有り難う御座いました』     折れそうな身体で何度も何度も ウィリーは 深く深く頭を下げた。
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