1人が本棚に入れています
本棚に追加
そのウィリーの顔はどこまでも安らかで、どこまでも優しかった。
マクドナルドだけを薄暗い部屋に残して、彼は看守に手を引かれ廊下へと出ていった。
死へ続く廊下へ…
小さな弱々しい足音が遠ざかっていく。
暫く茫然と涙を流していたが、胸の中が一杯になった熱い感情が、マクドナルドの身体を衝き動かした。
気が付けば
中年刑事は走っていた。
自分の頭と身体が切り離されたかの様な感覚。
走る足がスローモーションに見え、廊下がとても長く感じた。
遠ざかっていく憐れな足音を追い掛けた。
只管に、無心に。
その力強い気配に気付き、ウィリーは小さな歩みを止めた。
『君は!!』
肩で息をしながら、
マクドナルドは心の底から叫んでいた。
『君は、微かにせよ理性と罪悪感を持っていた!君は獣なんかじゃなかった!ちゃんと【人】だったんだ!!』
強い強い肯定。
生まれて初めて投げ掛けられた肯定に、背を向けたままウィリーは小さく答えた。
『有り難う…御座います…』
その身体は、
微かに震えていた。
最初のコメントを投稿しよう!