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―時は過ぎ、
ウィリー・ギリアムによる連続猟奇殺人事件の影も少しづつ霧散していき、平穏な日差しが街を照らし始めた頃。
マクドナルド刑事は定年退職し、とある田舎町に腰を下ろした。
過去の鋭い眼光は衰え、失った今でも、彼は一時たりともウィリーを忘れた事は無かった。
毎年刑が執行された日に必ず、マクドナルドは花束を供えにウィリーの墓に足を運ぶ。
そんな彼を周囲の人間は
『被害者家族に対する侮辱だ』
『狂っている』
『警察の恥さらし』
と罵った。
だが、
彼は墓参りを止めなかった。
彼は、
誰よりもウィリーを『知っている』。
『知っている』からこそ、
自分は墓参りを止める訳にはいかなかった。
マクドナルドは言う。
『この日は、彼が地獄から解放された記念日なのだ』
と。
柔らかな風が吹く青空の下、
供えられた白百合の花が
気持ち良さそうにその身を揺らしていた。
―【殺人鬼に花束を・了】
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