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『内緒だぞ!
絶対誰にも言うなよ!』
ガキ大将の勝人君が私に何度も念押しする。
私は右も左も分からない山奥に無理矢理連れらてこられただけなので、取り敢えず頷く事しか出来なかった。
子供の足じゃ険し過ぎる山道を、勝人君は馴れた足でズンズンと進んで行く。
『ま、まって、待ってってば勝人くぅん…』
都会から転校してきたばかりの貧弱な私には一歩一歩が重くて苦しい。
真夏の太陽が照り付ける中、追い付こうと必死に走る、
でも
『あ!!』
すてんっ!と蔓(ツル)に足を引っ掛けて転んだ。
痛くて苦しくて帰りたくて…
私はわんわん大声を上げて泣いた。
それに気付いた勝人君は、
遠く離れた場所から急いで駆け寄って来ると、私に手を差し延べた。
『も少しだから…泣くな!
着いたらその…お菓子たんと食わせてやる!』
そう言って背中に背負ったパンパンに張ったリュックを揺らして見せた。
私は無言で頷くと、浅黒い彼の手を握った。
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