青年は遺書を買いに

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僕は今日、 遺書を書く事を決めた。 絶対書かねばならないと前々から思っていた。     その遺書は 今すぐ必要になる物ではないかもしれなかったが、絶対に必要になる気がしたからだ。   絶望が拭えない。 毎日寂しさや虚しさで胸が潰されてしまいそうになる。   いずれ自分は『終わり』を選択するのだろうと 心のどこかに確信めいたものがあった。     便箋を買いにコンビニに行く。 自動ドアが開いた瞬間、今流行のアイドルの歌が軽快に溢れ出す。   纏わりつく様な猫撫で声が とても耳障りで鬱陶しく感じた。   顔をしかめながら陳列された色とりどりの商品の群れをぐるりと見渡していく。   便箋…便箋…あ。   パッと目に飛び込んできたのは、日頃愛喫している煙草のパッケージ。   ああ、そういえば、考え事をしている最中に煙草を全て吸い切っちまったんだった。   買わなきゃ駄目だ。   僕はかなりのヘビースモーカーなもんだから、 ものの数分で体がニコチンを欲っしてしまうのだ。   今日は少し金に余裕が有るし、カートン買いをしておこう。   備え有れば憂いなしだ。
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